皆さま、ご機嫌麗しゅうございますか?
小説を読んでいると、時々、バンコクを舞台にした物語に出会うことがあるわね。
今日は、そんな小説のひとつ、「愉楽の園」(宮本輝作、文春文庫)のお話。
(少し内容にも触れるので、ご了承くださいね。)
舞台は、1980年代前半から中ごろのバンコクだと思われるわね。
日本人女性、藤倉恵子と、王族の血を引くタイ人政治家、サンスーン・イアムサマーツの恋愛をベースとした物語よ。
ホム マリが、この小説のどういうところが気に入っているかというと、当時のバンコクの様子をうかがえる描写が素晴らしいと思うの。
2000年代に入って、急速に変貌を遂げているバンコクになる前の、‘古き良き時代’という言葉とはちょっと違う、‘産声を上げる前’とでもいうべきバンコクの街並みが感じられるの。
‘東洋のベニス’と呼ばれていたころの水上交通網の名残も残しつつ、ガタガタ揺れながら、排気ガスを振りまいて走る車で渋滞する市街地。その横で、食べ物を売る屋台。
あと数年後には、バンコクから消えてなくなりそうな風景が、「愉楽の園」には描かれているのよ。
その中で、今後もバンコクの乾季の風物詩として変わらないであろう、‘シーロムの燕’がご縁で出会う二人なのよね。
シーロム周辺に住んだことのあるホム マリにとっても実感として、あるかも!と感じられたわ。
そして、「愉楽の園」では、タイ人社会の人間関係や表と裏みたいなのも少し垣間見れるところが、特徴的ね。もちろん、完全にフィクションのお話だけれど、外国人の目から見ると、タイ人社会ってこういう面もあるのでは?と思ってしまう人物設定が、恵子とイアムサマーツとの関係に大きく関わってくるのよ。
純粋な恋愛小説という面からみると、賛否両論がありそうな小説ではあると思うけれど、バンコクの空気を感じられる一冊であることは、間違いないわ!
タイに行く前に読まれるのも良いと思うけれど、ホム マリは、タイから帰国後に「愉楽の園」を読まれると一層物語に入ることができる気がするわ♬
それに、ちょっとタイの空気感が恋しくなった時にも「愉楽の園」、いいかもしれないわね。
それでは、皆さま、チョクディーカ。