皆さま、ご機嫌麗しゅうございますか?
自粛生活から解放されたと思えば、今度は梅雨に突入ね。
梅雨時に雨は降ってもらわないと困ることになるけれど、やっぱりステイホームになりがちよね。
そんな時は、やっぱり読書
特に壮大な歴史小説は、ジメジメした空気を吹き飛ばしてくれるような、パワーを与えて枢と思うの。
勿論、タイに関連した歴史小説もあるのよ。
タイバンコクを訪れたことのある方なら、日帰りツアーなどで世界遺産にも登録されているアユタヤを巡られた方も多いのではないかしら?
そして、その地にかつて日本人町があったことや、山田長政という人物が活躍していたというお話をなんとなく聞いたことがあるわ!という方もたくさんいらっしゃると思うの。
今日は、そんなアユタヤを舞台に、主人公・山田長政野望とロマンを描いた小説、「王国への道(遠藤周作著、新潮文庫)のお話。
物語の内容にも触れるので、ご了承くださいね。

歴史の必定、栄枯盛衰

王国への道」の小説として面白いところは、おおまかな歴史的史実に則りながら、詳しいところは遠藤が思い描いた、壮大なストーリーであるということね。
しかもその融合具合が絶妙で、「王国への道」を読み終えたとき、実際の山田長政の伝記のように思えたわね。

時代は江戸の初期、切支丹への弾圧が厳しくなる中、藤蔵(後の山田長政)のような野心溢れる人物が、切支丹に紛れて日本を脱出し、異国で一旗揚げようと企んでいたとしても不思議ではないし、本当はそのような人物が結構いたのではないかしらと、ホム マリには感じられたわ。
そんな脱出劇の折に藤蔵が出会うのが、重要な登場人物であるペドロ岐部
彼も実在の人物だったそうで、山田長政名誉と言った‘現生の王国’を追求するのに対し、ペドロ岐部は、‘魂の王国’を夢見て人生を邁進する人物として、山田長政との対比がうまく描かれているわね。

中国の貿易商との出会いからアユタヤと言う国を知り、そこに住み着くことになった山田長政は、その知恵才覚を発揮して、史実のとおり、ソングタム王から官位を授かることとなり、その後もしばらくは、政争をうまく切り抜けていったのね。
でも、罠や裏切りといったことから、山田長政が思い描いていた‘王国’を目前にして、あえなく毒殺されてしまうの。
そんな彼の生きざま自体が‘栄枯盛衰’であるし、彼が勝ち戦を収める場面に遠藤が随所にちりばめている、徳川の時代には既に亡き戦国武将が採用してきた数々の戦法からも、永遠の栄華繁栄は無いという、人の世の儚さをホム マリは、感じたのよね。
それに、当時のタイ社会を垣間見ることができるという点でも、とても興味深い小説といえるわ。

片やペドロ岐部は、ローマで晴れて神父となり、周囲の人々の説得にも応じず、切支丹を禁教としている徳川の日本へ遂に戻り、ある意味彼の本望であった、拷問の末に処刑という道に進んで、‘魂の王国’に到達できたかのようだけれど、それはどうなのか誰にも分からないのではないかしら。それは、目には見えない国だから。

ホム マリがアユタヤを訪れたのは、この「王国への道」を読む随分前で、‘日本人町’と書かれた石碑をツアーのバスから、へ~っ、そんな時代に日本人が何千人も住んでいたんだ、とぐらいに眺めたり、ビルマ軍の攻撃で切り落とされた仏頭菩提樹の根に埋まった姿で有名なワットマハタート等の遺跡群を、背景の歴史もよく分からないまま散策していたわ。
そんな一観光客であったホム マリでさえ、赤茶色のレンガの塊と化した、かつてのきらびやかな寺院などを思うと、時の流れとともにおこる‘栄枯盛衰’を体感したのよ。

タイの歴史の中で最も長く続いたアユタヤ王朝
その中で、一瞬の光として輝いた山田長政
そして、アユタヤ王朝もその後滅亡し、トンブリ王朝、そして現チャクリー王朝と繋がってゆくのね。
こんな風に考えると、「王国への道」、しみじみするわ。
そしてまた近いうちに、アユタヤを訪れ、その時は日本人町も歩いて訪ねたい衝動がこみ上げてきたわね。
それでは、皆さま、チョクディーカ。

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